10 October 2015

戦争と平和に関する書誌データベース

Bibliographical Database of Economic Ideas for War and Peace

 

Version 1.0

 

小峯敦・原田太津男

 

※「戦争と平和の経済学」に関する関連文献を集め、その重要度に応じて若干のコメントを付している。

 

Coulomb, F. (2004) Economic Theories of Peace and War, London and New York: Routledge.

 

※経済学の歴史300年近くに従って、重商主義時代から現代まで、著名な経済学者が戦争や平和に対してどのような貢献をしていたかを総覧した集大成の文献。

 

Dunne, P. and Coulomb, F. (2008) “Peace, War and International Security: Economic Theories”, in J. Fontanel and M. Chatterji (eds.) War, Peace, and Security, Bingley, UK: Emerald Group Publishing.

 

 

 

Edgeworth, F. Y. (1881) Mathematical Psychics: An Essay on the Application of Mathematics to the Moral Sciences, London: C. Kegan Paul. (エッジワース『数理精神科学』未訳。)

 

※エッジワースは主流派にあって、明示的に<戦争>概念を経済モデルに取り入れようとした。経済の状況を同意のある契約と、同意のない契約に分け、当事者間に同意が成立せず再契約を模索する状態が戦争と呼ばれた。エッジワースは自由な契約と破滅的な戦争が紙一重であることを暗示し、市場における契約が戦争の一時停止の意味しかないことを看破した(その後、モルゲンシュテルンの注目により、ゲーム理論の発展へ)。

 

Edgeworth, F. Y. (1915a) The Cost of War and Ways of Reducing It Suggested by Economic Theory: A Lecture, Humphrey Milford: Oxford University Press.

Edgeworth, F. Y. (1915b) On the Relations of Political Economy to War: A Lecture, Humphrey Milford: Oxford University Press.

Edgeworth, F. Y. (1915c) “Economists on war: Sombart, W., Handler und Helden; Nicholson, J.S., The Neutrality of the United States in Relation to the British and German Empires; Seligman, E.R.A., An Economic Interpretation of the War, Guyot, Y., Les Causes et les Consequences de la Guerre”, Economic Journal, 25(100), December 1915: 604-610.

Edgeworth, F. Y. (1916) “The Economy and Finance of the War by Pigou, A. C.”, Economic Journal, 26(102), June 1916: 223-227.

Edgeworth, F. Y. (1917a) Currency and Finance in Time of War: A Lecture, Humphrey Milford: Oxford University Press.

Edgeworth, F. Y. (1917b) “National Power and Prosperity: A Study of the Economic Causes of Modern Warfare, by Gill, C.”, Economic Journal, 27 (105), March 1917: 96-98.

 

Edgeworthによる書評

Lehfeldt, R.A., Eonomics in the Light of War           EJ, Vol.27, No.105(Mar.1917), pp.98-99

Some German Economic Writings about the War      EJ, Vol.27, No.106(Jun.1917), pp.238-250

National Bank of Commerce in NY, War Finance Primer        EJ, Vol.27, No.107(Sep.1917), pp.400-401

Seligman, E.R.A., A Construction Criticism of the United States War Tax Bill                EJ, Vol.27, No.107(Sep.1917), p.401

After war problems            EJ, Vol.27, No.107(Sep.1917), pp.402-410

Loria, A., The Economic Causes of the War  EJ, Vol.28, No.111(Sep.1918), pp.317-320

Pigou, A.C., The Political Economy of War   EJ, Vol.32, No.125(Mar.1922), pp.73-77

Brand, R.H., War and National Finance       EJ, Vol.32, No.126(Jun.1922), pp.217-219

 

 

Pigou, A. C. (1921) The Political Economy of War, London: Macmillan. 

Pigou, A. C. (1939) The Political Economy of War, the revised version, London: Macmillan. (大住龍太郎訳『戦争経済学』今日の問題社、1941年;乗田利喜太訳注『戦争経済学』研究社、1942年;内山脩策訳『戦争の経済学』実業之日本社、1944年。)

 

※ともに抄訳。研究社版は、英語原文と対訳方式である。訳者も言うように、中盤の租税・公債論などは『厚生経済学』の流れを踏まえ、読み応えもある。ただ抄訳のせいかはわからないが、本書は戦争経済学というジャンルに対するピグーの基本スタンスがややわかりにくいものとなっている。そこで中山によるピグー評を借りれば、そのスタンスは以下のようにみることができる。ピグーは、旧来の平時の経済学と対比すれば、戦時の経済学は一時的、病理的、攪乱的な条件の下に成立するにすぎないと考え、平時の経済学の一分科として戦争経済学を位置付けている。

 

 

Robbins, L. (1937) Economic Planning and International Order, London:

  Macmillan. (ロビンズ『経済計画と国際秩序』未訳。)

 

Robbins (1932)などで提唱された「経済科学」と「応用経済学」という二分法に則って、国際秩序を構築する方法を模索した本。戦争の原因を、恐怖という心理要因、利害衝突の元凶である国家主権、不況などの経済的加速因子という3つに求め、「国際的自由主義」という思想を推進しようとした。

 

Schumpeter, J. A. (1918) Die Krise des Steuerstaats, Graz: Leuschner & Lubensky. (木村元一・小谷義次訳『租税国家の危機』岩波文庫、1983年。)

 

※マルクスの考えを受け継いだ帝国主義論が、高度な金融資本主義・独占資本主義を資本主義の必然的な、最終的な発展段階と見なしたことに反論する。シュンペーターは自由な経済活動によって伝統や本能に基づいた習慣は廃れると考え、ゆえに資本主義では帝国主義的な衝動が育たない(平和主義的)であるとする。帝国主義は偶然の「隔世遺伝」として処理される。

 近代的な国家はすべて「租税国家」(封建国家から脱皮し、増大する官僚費・戦費を制御する主体)になる。実際の戦費調達、戦債返済は可能な計画であるから、短期的には資本主義は生き延びる。その意味で「租税国家の危機」は回避される。しかし長期的には戦争とは関わりなく、資本主義精神が内部から変化するため、租税国家を超える存在になるだろう。後の『資本主義・社会主義・民主主義』(1944)に結実する、壮大な体制論となる。

 

Sombart, W. (1913) Krieg und Kapitalismus, Leipzig: Duncker & Humblot.(金森誠也訳『戦争と資本主義』講談社学術文庫、2010年。)

 

※戦争の破壊と創造という二つの顔に着眼し、「戦争がなければ、そもそも資本主義は存在しなかった」という命題の下、資本主義的経済組織としての軍隊が持った影響を分析。規格の統一や需要増大を通じて紡績業などに対する軍隊の影響を説いた「第5章 軍隊の被服」などは経済発展論としても示唆に富む。

 

Veblen, T. (1917) An Inquiry into the Nature of Peace and the Terms of its Perpetuation, New York: Macmillan.

 

 

 

 

中山伊知郎(1941)『戦争経済の理論』日本評論社

 

※先のピグーの研究とは対照をなすのが、ドイツの国防経済学である。これは、戦争経済学の立場を一般的と考え(「平時の戦争経済」あるいは「永久の戦争経済」)、戦時と平時の区別を前者に解消する。この第二の立場とも異なる第三の中間的形態を探る中山は、総力戦時代には経済学の全分野にかかわるものとして戦争経済を位置付ける一方で(ピグー説の批判)、戦争経済は、計画性との関係で長期の観察を要するので、短期の一時的現象ととらえるべきではなく、経済の一般法則の影響を受けるので、一般経済学の分析の対象となり得るとみる。

 ピグー、マーシャルやケインズへの言及はもとより、ドイツの国防経済学やゴットルの生活経済学なども網羅的に踏まえた、当時の日本における戦争経済学の一つの到達点を示す著作。

 

 

 

正木千冬(1932)『戦争経済学』一元社

 

※理論書と言うよりは、ジャーナリストによる戦争経済の時論的分析。後の鎌倉市長。東大でマル経を学んだようだが、わずかな用語法以外に影響はさほど感じられない。社会主義計画経済というより、戦時統制経済や国防経済に利があるという立場で書かれている。これは(言論統制下の)戦中日本の戦争経済学の一つの代表的なスタンスを示すように思われる。

 

Howard,M. (2009[1981])War in European History, Oxford.U.P.(奥村房夫・奥村大作共訳『ヨーロッパ史における戦争』中公文庫、2010年)

 

※封建騎士、傭兵、商人、専門家、革命、民族、技術者という担い手に注目しながら戦争と社会の関係性を解き明かす。石津朋之による解説「キャプテン・プロフェッサー〜マイケル・ハワードと戦略研究」は読み応えがある。

 

Poast, P. (2005)  The Economics of War,McGraw-Hill/Irwin(山形浩生訳『戦争の経済学』バジリコ、2007年)

 

※歴史的アプローチとはちがって、コスト-ベネフィットに注目し、戦争をミクロ/マクロ経済学的視点から捉える教科書的な一冊。内戦の原因としての資源依存度、自爆テロリストのプロフィール、戦争の採算性など、興味深い論点が含

まれる。経済学の手法を使って社会現象をクールに(?)切る流行にきちんと乗っている印象。

 

 

 

 

 

Wainant,J.G.(1941)Studies in War Economics(大住龍太郎訳『戦争経済研究』東晃社、1942年)。

 

 分野別の共同研究の編著翻訳。ペンローズ「総力戦に対する経済組織」、リッチズ「戦費負債論〜ケインズ案の分析」、リッチズ「戦時相対賃金論」等を所収。第二次大戦期間中の出版で、敵国(英国)経済政策の研究のために出版。