私は龍谷大学経済学部から同大学院に進み、その後、広告代理店に就職しました。そこでマーケティングを学び、その後、エンターテイメント会社(エイベックス)に転職しました。広告代理店では飲食物のマーケティングだったのが、エイベックスではアーティストたちのブランディングを行ないました。アーティストと徹底的に話込んで、どの強みを活かして、音楽に止まらない全方位ビジネスを構築していくのか、を考えてきました。その後、映像部門を立ち上げるということで、映画(レッドクリフ等)やアニメ(ワンピース)の宣伝戦略立案をしました。今は独立して、ビールの新商品開発や企業コンサルタント、ビジネス書作家として活動しています。
私の仕事は「コミュニティ」が大事なキーワード。大学では主にNPOやボランティアの研究をしていましたが、「志」や「みんなでやろうよ」という気持ちで行動していれば、コミュニティ(仲間)が生まれてくるのですね。その仲間の行動をプロデュースしていくことが、世の中に新しく仕掛けていくことにつながります。音楽マーケティングはまさに同じで、アーティストのファンクラブは、このコミュニティをプロデュースしたものです。コミュニティが大きく安定的に形成されれば、売上げは安定します。ビジネスではこれが一番大事です。
アーティストの作品やパフォーマンスに共感したファンの集まりを維持し、活性化させていくという本質は、実は大学院で学んだことと根底では繋がっているんですね。
今、龍谷大学の学生支援のキャリアコミュニティをフェイスブック上で運営しているのですが、意外と盛り上がってきました。参加者は現在二百人。今後、そのコミュニティ参加者がダイナミックに動ける仕掛けを考えています。例えば、OBやOGが後輩を気にかけてくれているので、こういう縁を活かすこと。学生が会いたい人に会えるようなSNS上のOB訪問が出来たら便利ですよね。
「六次の隔たり」という理論があります。六人を経由したら、絶対会いたい人に会えるという話です。オバマ大統領に会いたいなら六人経由したらオバマにも会えるってやつですね。それをキャリアコミュニティで実現したいのです。
コミュニティのエンジンになれる人は、「自分で課題を見つけて、勉強する」ものです。 今の大学生は、中学・高校のような先生がしっかりと教えてくれるインプット型教育を前提に大学に来てますが、大学は逆。アウトプットを生み出す所です。
ですから、大学一年生のときから、できるだけ色々な人や作品に出逢って、たくさんの優れたサンプルを見ることが大事です。そこで得たヒントが自分の学問テーマと繋がり始めると一気に育つものです。
高校まではインプットのやり方を徹底的に教わってきていますが、大学では自分が「エンジン」になることを意識して、どのようなアウトプット(自己表現)ができるのかを探究してほしいです。なぜなら、アウトプットこそが、社会に出た時に一番評価されるものだからです。
それから龍谷大学の偏差値で、就職先の企業を決めてしまう人がいました。その発想が受験勉強の弊害。就職は短期で決まるものではありません。私も最初は広告代理店にいましたが、エイベックスという企業に転職しましたし、今は独立しています。キャリアは中長期に目的地に到達できればいいという柔軟的な発想でいいと思います。ただ、自分がなりたい方向性はぶれてはいけないし、高い最終目標を設定するならば、長期戦略を考えて、その通過点を着実に歩めば、いつか行きたいところにいけると思います。
私が保護者の方々に伝えたいのは、大学は「学びの構え」が高校までとは異なるということです。高校まではインプットが重視され、偏差値等にとらわれがちですが、その延長で大学生活を考えると全く面白くないはずです。そうではないんです。大学は優れたアウトプットを生み出す「場」であることを認識してほしいです。そのアウトプットのために学問を徹底的に探究するのです。大学は、学生自らが自己表現を鍛錬する場であるという認識をもってほしいです。