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Faculty of Economics

経済学部

アドバイザリーボード

「大学で何を学べばよいか」立命館大学 名誉教授 唐沢 敬

アドバイザリーボード

大学生から研究者になるまで

私が大学教育を受けたのは一九五 〇年代中頃で、社会や世界がどう変わっていくのか等の議論が盛んに行われていた時期でした。かつて植民地・従属国であった国が相次いで独立し、新しい発展途上国として登場してくる中で、経済的に自立する道がどこまで拓けるのかを考え、それが日本の復興と重なり、経済学を専攻するきっかけとなりました。

初めはアジア問題の研究が中心でしたが、その後、中東から中央アジアへとフィールドを伸ばし、次第に資源問題に関心が移っていきました。国が自立するとしたら、その国にあるものを使って目的を達成するというのが常識的です。戦後の東西対立の中、アジア、中東、中央アジアへと経緯をたどり、調査や執筆に関わってきました。

学ぶ裏付けを現場で見つける

私は約三十年間、大学その他で教鞭をとり、経済学教育を通して次の世代を育てるためによい方法がないかずっと考えてきました。長年、海外での研究・教育にも携わってきました。その過程で選択したひとつが「アクティブ・ラーニング」という方法です。

カッションをさせるという手法です。また、可能な限り学生を現場に連れて行くということも大事にしてきました。工場や市場に連れて行き現場で指導もしました。最初はゼミ生が中心でしたけど、講義の中でも興味を示した学生は積極的に現場に連れて行きましたね。教室で学ぶ裏付けを、経済や生活の現場で見つけるというのがねらいでした。

大学一年生からの動機付けが大事

私は、初年次教育(大学一年生)の時からの「学びへの動機付け」が最も大事だと思っています。学生たちにどうやって勉強に対する関心をもたせるか、そのためには、工夫が必要です。人はそれぞれですし、大変な労力を要しますが、一つの真理だと思うのは「こちらの努力によって学生の意識は変えられる」ということです。

例えば、過去十年間、学生各二十名をパプアニューギニアやモンゴルに派遣し、私もついて行きましたが、現地の学生たちと井戸掘りや家畜の世話で汗を流させました。国境を超えての議論もさせました。その過程で学生たちの関心が大きく変わる事実も沢山見てきました。「自分にもできることがある」と自覚した時が一番成長する時だと思います。

内外問わず、幅広く世間や世界を知ろう

私は若い人たちに、どんな形であっても、常に「最高を意識」して仕事を手がけてくださいと言い続けています。同時に、できる限り広く世間や世界を知ることが必要です。そのためには、書物を読み、現実に触れることが大事です。現場の人や専門家から直接話を聞き、その内容を自分で知ることです。講義でもゲストスピーカーを招いて話をしてもらうこともありますが、誰かの話を聞いた時に「貴重なチャンスを得られた」というような意識をもってもらうことが重要です。出会いや出来事を通じて人は変わります。日本の学生はそういうチャンスに出会うことが少ないので、そうしたチャンスをつくりだすため工夫するのが大学であり、教員の責任だと思っています。

就職活動のミスマッチ

昨今、若い人の就職状況を見ていて、求人が乏しく就職活動が難しい状況にあることは事実です。しかし、私の関係している国際関連の団体等からは毎日のように求人情報が送られてきていますし、新しい分野の求人も増えています。ここで問題なのは、残念なことに、条件に見合った人材が十分育っていないということです。このミスマッチをどう埋めていくのか、今の課題の一つです。

少ない人材を伸ばすことで、周りが感化される

大学はトータル四年間で結果を出せばいいとしても、最初の動機づけが何よりも大事です。学生をいろいろなところに連れて行き、刺激を与え、「挑発する」ことも必要です。これは多彩であればあるほどいいと思っています。その中で勉強する気構えを出してくる人は、正直十%程度かもしれません。しかし、この十%を徹底して伸ばすことで、次の学生たちが感化され、伸びていくように感じます。伸びる学生にはチャンスを与えた方がいいです。

保護者も一緒に育てるという意識が必要

保護者の方にも、是非、大学教育に参加していただきたい。例えば、学生の進路を話し合う時など保護者に参加していただいてもよいと思います。大学に預けて終わりというのではなく、「大学と保護者・社会が一緒になって次の世代を育てる」という意識が必要です。同時に、保護者に大学教育に関わっていただくためには、大学側も仕掛けが必要だと思います。さらに、社会(市民)が気軽に大学を訪れる(関わる)環境を整備することも大切です。

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