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Faculty of Economics

経済学部

アドバイザリーボード

「アイデンティティとは何か/自己形成プロセス」京都大学高等教育研究開発推進センター 大学院教育学研究科 准教授 溝上 慎一

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鉄道ファン歴三十五年

私は小さい頃から電車の写真をよく撮っていました。大学生になると、「なんで電車の写真なんか撮っているんだろう」「撮って何になるんだろう」と思い始め、写真を撮れなくなりましたが、十年くらいかけて、そうか「撮りたいから、撮るんだ。これが私なんだ」と思い、また撮り始めました。一枚の写真を撮るために三日間かけることもあります。

実は、私は高校の時に病気をして、卒業までに五年かかりました。受験勉強どころではなく、人並みの生活に戻ることだけを目標にしていた時期があります。ですから、大学に進学できた時は、それまでの時間を取り戻す思いで、たくさん勉強しましたね。

主体的に学ぶということ

私の研究の一つに「アクティブラーニング」があります。これは「講義における受け身の学習を少しでも乗りこえ、講義においても、演習やプロジェクト科目などにおいても、主体的に学ぶこと」を定義としています。授業というのは学生のアクティブラーニングを意識してやるものではないかと思います。

私は、授業をつまらないと感じる学生がいた場合、それは教員側の問題だと考えています。学生が面白おかしく授業を受けられるようにという意味ではありません。教員ならば学生がどの程度の能力を持っていて、どんなテーマなら食いついてくるかを知っていなければなりません。そうして、自分の講義に関心を持ってもらえるように、自己研鑽を重ねていかなければなりません。

二つのライフを意識すること

全国の大学生調査をしている中で、二つのライフを持っているかいないかが、学生のその後の成長を大きく左右することがわかってきました。 二つのライフというのは

Future Life:将来の見通し・目標を持っているかいないか

Daily Life:その目標を達成するために日々理解して実行しているか

という概念です。

全国調査の一般的な結果では、二つのライフを持っている学生は約二十五%で、将来の見通しを持たない者が約二十五%、将来の見通しをもっていても何をやればいいかわかっていない、もしくはやれていない者を併せると七十〜八十%。つまり、かなり多くの人は、将来の見通しがないか、あっても日常では努力をしていないということになります。

二つのライフを持っている学生は、学習力や知識・技能の習得の程度が高く、持っていない者はそれらが低いという結果が一貫して見出されています。だから、私が考える良い学生というのは、将来に対して本気であり、今の頑張りが将来に繋がると信じて勉強をしている人たちのことです。そう思えない学生は単位を取得することだけが目的になりがちで、充実した学習・学生生活が送れていないと思います。

学習・キャリアが社会人になってからの仕事の業績・パフォーマンスに影響する

社会の知識基盤化、情報化、グローバル化が進む中で、新しく学ばないといけないこと、新しい対人関係をつくっていくことが爆発的に増えています。社会人になって、働きながら新しい職場環境や新しい課題に直面した時に勉強が必要であることに気づいても、関係性を拡げないといけないことがわかっても、学生時代にそうした能力や習慣を身につけていない者は、大変苦労することでしょう。

私の調査では、良い学生というのは、中学生・高校生一・二年生くらいから将来のことを考えていて、大学生になっても勉強する習慣が身についています。そのような学生は、社会人になっても職場で高い業績やパフォーマンスを示しています。逆に、将来を考えていない学生は、学習態度や生活全般にも影響を及ぼし、社会人になって低い業績やパフォーマンスしか示せていません。キャリア教育は大学一年生からでは、はやすぎると言う方がいますが、私ははやい時期から将来の見通しと勉強とを促していくことが大事だと考えています。

まずは勉強、そして遊ぼう!

学生は勉強をしっかりやることが大事です。但し、勉強しているだけの学生生活では駄目です。コミュニケーション力も育ちません。多くの仲間や教員と交流し、外に出て、勉強しつつも遊ぶことが大事です。勉強と遊び、このバランスが難しく、極端にならないこと、そして物事を一つ一つ納得いくまで追求し、取り組む姿勢が必要です。まずは目の前のことをしっかりこなすことが、のちのちの大きな成果に繋がってくると思います。

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