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Faculty of Economics

経済学部

アドバイザリーボード

「EREの意義、学生へのススメ」京都大学経済研究所特任教授、ERE試験委員長(経済学検定試験)西村 和雄

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私の学生時代は大学紛争が盛んでした。そのころの学生は理系文系問わず広い勉強をしていていました。実際、私は理系に所属していたものの、社会的な問題に関する関心も強かったのです。当時の状況の中で、最初はマルクス経済学に関心を持ちましたが、立場が違うものが議論しても、出発点、すなわちイデオロギーの違いがすべてで、議論がかみ合わないことを感じていました。その点、数学を使うとはっきりと答えが出ますので、その方が自分には合っていると思い、数理経済学の道に進みました。

人と同じ研究をすると、なかなか認められない

数理経済学で博士論文を書いてたのですが、流行っている分野は易しい問題はすべて解かれていて、難しい課題しか残っていないので論文を書くのが大変でした。

そこで私は、「今までやられていることを利用はするが、人とは違うことをやろう」と考えました。ちょうどそのとき、ニューヨーク大学の知人と共同論文の執筆をはじめていたのですが、動学問題での安定性というものには先行研究が多く、やっても行き詰まると思い、安定性の数学的条件を経済学的に吟味しなおしてみるということをはじめました。具体的には、仮定されている数学的条件を満たす経済モデルはどういうものか、通常の効用関数や生産関数では満たされるのかを調べたのです。その結果、普通の条件のもとでは安定性の十分条件が満たされないことが多いことに気づきました。それで、安定性が満たされないケースというのはどういう場合かということに関心がいったのです。その分野は、まだ誰も研究されていなかったです。そういった他の人が見ていない分野は、なかなか認められにくいのですが、逆に研究しやすいという利点もあります。結局は、そこから、非線形経済動学、複雑系経済学と広がっていって、自分の分野を作っていったのです。

今、生活していられるというだけで幸運という気持ち

私が座右の銘としているのは、「つまらないと思っている今日は、昨日亡くなった人がなんとしても生きたかった今日」という言葉です。普通に生きていられることがどれだけ幸運なのかを人は忘れてしまいます。そして持っていないことに対する不満等が浮かんできてしまうのですけれど、基本的には「生活していられるというだけで幸運なこと」なのだという気持ちが大切です。だからこそ、今日に感謝して、精一杯できることを続けることが大切だと思います。

それと、子ども達が普通の暮らしをできるかどうかは、他の子どもたちがどういう暮らしをするかに影響されます。我が子だけに良い教育を与えても、すべての子どもに良い教育を与えなければ、社会の安全が失われます。社会の安全が失われると、自分の子どもも幸せな暮らしができなくなります。良い教育を与えるというのは、我が子に対するだけでなくて、日本全体の子どもで共有されなければいけないのです。

経済学検定試験(ERE試験)のススメ

学生が経済学に興味をもち、わかりやすく経済学を学ぶことができるように、何か建設的なことができないか考えた結果、「経済学検定試験」という手段にたどり着きました。検定試験の狙いとしては、自分が勉強した結果として、客観的に学習結果がわかれば、さらに学習意欲を燃やすことに繋がるだろうということです。昔と比べたら、今は、どこの大学も学生サービスを親切にやっていますが、学生の学習意欲の維持・向上というのが大きな問題にもなっています。今後、さらに多くの学生が経済学検定試験を受験することで、役に立つ経済学の理解を深めてほしいと願っています。

海外に負けない競争力と自分を作ろう

日本の将来のことを考えると、学生を含め日本人がどんどん外国に出て行ったほうがいいと思います。たとえ海外で働かなくても、海外に目を向けることが大事です。日本人は海外の人と競争せざるを得ないという現実を認識し、日本だけの基準で物事を判断したりしないように意識することが大切です。それは子育てにも共通すると思います。「海外に負けない」という気持ちを常に持っていないと、これからの日本が生き残れないことにもなりかねません。

TOPICS

ERE試験の受験料を全額補助

本学経済学部では、在校生に対して、外部検定試験(ERE検定・TOEIC試験)の受験料を全額補助し、学内で試験を実施することで、受験を推奨しています。検定の受験を通じて、学習理解度を客観的に測るとともに、受験に向けた学習意欲の向上を期待しています。

特にERE検定は、全国規模で経済学の数理的・理論的な基礎知識の習得程度と実体経済での応用能力のレベルを判定する試験であり、就職活動等においても役立っています。是非、多くの学生が受験することを推奨します。

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